感謝祭つれづれ


みなさん、感謝祭ってどんなイベントか知っていますか?たぶん聞いたことはあるけど、それがどういう起源を持つものなのかわからないという人が殆どだと思う。かくいうぼくだって、家族で集まって七面鳥を食べる日、くらいのイメージしか持っていなかった。どうやら一般的には、ピルグリム・ファーザーズがイギリスからマサチューセッツ州の植民地に渡って初めての収穫を記念する行事とされているらしいです。これだって、少し前にパソコンでパタパタと調べて得た知識。


そんなわけだから、アメリカ人のクラスメートが『もうすぐ感謝祭だね』とソワソワしていたりするのもぼんやりと眺めていただけ。前日の午前中の授業が終ると、みんなが『have a happy Thanksgiving!』と言いながらニコニコ顔で大荷物を抱えソイソと家族の待つ地元へ帰るのを見て、何となくそれがアメリカ人にとって特別なイベントなのだろうと実感が湧いてきたくらい。
それでもアメリカ人じゃないから関係ないや、と昼食のためにフラフラ大学のフードコートに向かって歩いていたら、一人のアメリカ人の友人から『明日はインターナショナルスチューデントでパーティーでもするの?』との質問。特に何も考えてないと答えると『それはよくない。みんなで七面鳥焼いてパーティでもすればいいのに』と残念そうな表情。言われてみれば確かにそうだなぁと思って『そうだね。でも前日だし、これからみんなに声かけてもあまり人が集まらないかもしれないしなぁ、ブツブツ』とブツブツ言っていたら、彼が『よし。せっかくの感謝祭を一人で過ごすのも寂しいだろうから、よければ家のパーティーに来なよ。親戚がみんな集まってきっと楽しいよ』と、その場で母親に電話で確認。実はその場にいたタイ人の友人がインターナショナルスチューデントのパーティーに誘ってくれようとしていたらしいのだけど、そんな偶然でアメリカ人の家庭の感謝祭のパーティに行くことになりました。


翌日の午後、IRPSから招待されている他の2人の学生とともに彼の家に到着すると、既に15人くらいの人々の集まり。両親や親戚や隣人などに次々に紹介され、その後はビールやワインを飲みながら、30人くらいまでどんどん増えていく人たちと気ままにゆっくりと過ごす。とてもカジュアルでリラクシングな雰囲気。たぶん日本で言ったら正月みたいな感じなんだろうね。
彼の母親によると、かつては感謝祭に向けて女性が一週間くらいかけて準備をしたりと伝統的なイベントとして大変なこともあったものの、最近では七面鳥以外はみんなで料理を持ち寄って楽しくやろうという感じになってきたとのこと。『たいへんだったことも含めて昔もワクワクしたけど、こうやって気兼ねなくみんなでワイワイするのが一番ね』と感慨深そうに言っていました。
父親の方はへべれけに酔っぱらいながら、パーティに参加してくれた人々と話してまわる。年寄りから子どもまでみんながぼくたち留学生にも気軽に話しかけてくれて、ささいなことでとても嬉しそうに喜んでくれる。感謝祭って、みんながそうやってつながっているということを、おいしい食事とおいしい飲み物、楽しい会話をつうじて感じることができる日なんだろうね。日本人が除夜の鐘を聞きながら初詣をし、お節をつまみながらみんなで楽しくお酒を飲むように。カポーティーの短編に『感謝祭のお客』というとてもいい話があるのだけど、そこある温かさのようなものをより深く実感できたような気がした感謝祭でした。


昨日はブラック・フライデー(日本の初売りみたいなもの)で午前4時起き、夜から別の友達とのパーティーと過ごして少し疲れがたまっていたので、今日は友達と一緒にアメフトを見る約束をキャンセルして家でゆっくり。再来週には怒濤の期末試験が控えているし、気分転換のためにもね。
さっきぼんやりと試験勉強の合間にテレビをつけたら『CNN HERO』というアンダーソン・クーパーが司会をつとめ、世界のCNNからノミネートされたHEROを表彰するプログラム。それだけ聞くとどこにでもありがちなものにも思えるのだけど、何となく見始めたらけっこうおもしろくて、最後まで見切ってしまいました。
内容がアメリカ的な正義感に基づいていると言われたら否定はできないのだけど、アメリカに限らず世界中で困難を抱えている人たちを救おうとする人々をHEROとして敬意を表するということを、ここまで自然に、真剣に伝えることのできるメディアというのも日本にはないのだろうな、と感じました。これもまたアメリカの感謝祭の一つなのだろうね。アメリカの全てが良いと言うつもりは全くないけれど、日本のマスコミもたまには誰かを批判したり、何かを斜めから見ることをやめて、シンプルにストレートなものを作ってもいいのではないかな。そういうプログラムだからこそ、ほんとに何かを伝える力が試されるような気がする。


写真:感謝祭のパーティでたくさん食べ、たくさん飲んだ後のデザートの時間。『自分の家だと思ってよ』と言われてもなかなかそうはいなかいものだけど、このパーティーは心からリラックスできました。