秋の夜は・・・

poriporiguchi2005-10-11

最近、涼しさを超えて寒さすら感じるような気候になってきましたね。
秋といえば、読書、食欲、等々、人それぞれいろいろあると思いますが、毎年秋になるたびにボクが思い起こすものといえばコレ、という一つの詩があります。


それは中原中也『一つのメルヘン』という詩です。

秋の夜は、はるかの彼方に、
小石ばかりの、河原があって、
それに陽は、さらさらと
さらさらと射してゐるのでありました。


陽といつても、まるで硅石か何かのやうで、
非常な個体の粉末のやうで、
さればこそ、さらさらと
かすかな音を立ててもゐるのでした。


さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
淡い、それでゐてくつきりとした
影を落としてゐるのでした。


やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
今迄流れてもゐなかった川床に、水は
さらさらと、さらさらと流れてゐるのでありました・・・・・・

中原中也が詩で描いた幻想的な秋の夜の風景は、自分にとって、とてもメルヘンチックで、同時にとてもメランコリックで、どこか人をもの寂しくさせる秋という季節をとてもよくあらわしているように思います。


そして、逆に、メルヘンチックでメランコリックな感情を秋という季節のある風景に託して描いているようにも思います。


ボクにとって秋とは、いろんな人の感情が出会い、そしてすれ違っていくように感じる季節です。何かあったかいようで、そして寂しいようで、でも、それでもいいような気がして・・・


三、四年前にくらべたら自分一人が抱え込んでいる問題に関してつらいことや悲しいことも減ったけれど、やはり秋になると、いろんなことを思い出して、やはり秋はあったかくて寂しい季節だな、と思ったりします。


でもそれもいいことなんじゃないかな、と思います。


秋の日に、自分に関して戸惑い、悩む夜には、中原中也の詩集はお勧めです。
自分を見つめ続け、悩み続けた一人の詩人の詩を通して、きっと自分をみつめることができるでしょう。たぶんね。