かわらないもの(銀杏の話)

poriporiguchi2005-11-19

最近、あまり運動をする機会がないので、暇なときには三時間くらいかけて近所を散歩することにしています。本読んだり、音楽聴いたり、いろんな事を考えたりしているうちに三時間なんてすぐに過ぎてしまいます。


今日も散歩しました。30分くらい歩いて、ふと顔を上げたら、まっすぐに続く道の街路樹の銀杏がとてもきれいに色づいていました。冬も近づいた季節の空の青さと、銀杏の葉の黄色さを見て、私は想い出しました。


去年の今頃、私は新潟の小千谷にいました。新潟中越地震のボランティアとしてです。道路はボコボコだし、建物は壊れてるし、水、ガスは使えない・・・震災の現場を目の当たりにして、やはりいろんな思いを抱きました。ボランティアをしながら、他のボランティアの人の話を聞いて感銘を受けたり、逆に一部のボランティアの自己満足的な活動に嫌気がさしたり、毎日がそんなことの繰り返しなわけです。


一日のボランティアを終えて、一人、小千谷での滞在場所に帰ってくると、テレビもないので、静まりかえる震災後の街中のアパートで、冷え切った体を暖めるために『いいちこ』のお湯割を飲み、買い込んできた本を読んで過ごしました。そして、酔いが回って眠たくなったら布団にくるまって眠りました。


誰も知り合いのない新潟で、自分は一人、進路のこと、自分は何をして生きていきたいのか、それは自分に向いているのか・・・真剣に悩んだりして。いくら考えても答えは出ないし、どこに進んでいけばいいのか、途方に暮れながら過ごす日々です。


ボランティアを初めて4日目くらいのことだった思います。その日のボランティアは家の地下の倉庫の片付け。地下の倉庫にいたら突然震度5地震がきたりして、ドキドキしながらの仕事の昼休み、近くの公園のベンチで持参のアンパンを食べ終え、ふと空を見ると、高い青空に銀杏が広がっていて、黄色くて、まぶしくて、とてもきれいでした。


なぜか涙すらこぼれそうで、ずっと銀杏を見ていました。震災にあって、みんながつらくこわい思いをしているここで、でも銀杏はきれいなんだな、かわらないんだな、って。当たり前なんだけどね。


そう考えたら、自分のいろんな悩みもすっと消えていきました。


家族、友達、恋人、自然、自分の住んでる街・・・そういうものがみんなにとって変わらなく素晴らしいものであってほしい。ケンカしたり、別れたり、楽しかったり、つらかったり・・・どんなことがあっても、どこかでその人にとって『かわらないもの』があるような、そこから幸せになれるような、少しでもそれの役に立てたら・・・一人でも多くの人の『かわらないもの』を守っていけたら・・・


今日、晴れた空に黄色い銀杏を見て、一年前の同じ風景、そこで感じたことを想い出しました。それは、きっと、自分にとって1つのスタートです。自分の中の、隠れた小さな引き出しにしまっておく、ある日の風景です。


画像:散歩中に見上げた銀杏