この世界はとても大きくて

poriporiguchi2007-06-16

異動先の部署にもだんだん慣れ、落ち着いてきたのだけど、仕事の上で英語を使うことが多いので少しがんばらなくちゃな、と思うこの頃です。
話とか聴くとはいうのはなかなか難しいけど、せめて支障なく英語を読めるようにしたいものです。


東京もいよいよ梅雨入りしたんだけど、まったく梅雨を感じさせない日々が続きますね。今日なんかとってもいい天気だったので、バスで砧公園近くの温水プールに行って来ました。50mのコースもあってけっこう立派でした。久しぶりに泳いだけど、そんなにつらくなく気持ちよかったです。でもこの一年、ランニングがメインだったので上半身の筋肉が衰えていたせいか、バタフライができなかったのは少しショックでした・・・肩や腕や背筋も鍛えねばね。


今週、ジョン・マグレガーの『奇跡も語る者がいなければ』を読了。
ある街の、名前が語られない人たちの生活が描かれていきます。
それはよくある日常のようだけど、自分たちが普段見ていないような人々の営みが描き出されています。この本に語られるものの多くは決して幸せとはいえない、というか何が幸せで何がそうではないのか、ということを判断することができない。
身近にありながら何気なく見過ごしているものって、実はそういうことなのかもしれない。


本の終盤、火事で妻を亡くし、それを救おうとしたときに顔と手に火傷を負った男が娘にそっと語りかけます。


『奇跡のように素晴らしいことはいつでもあって、みんなの目の前にいつでもあって、でも人間の目には、太陽を隠す雲みたいなものがかかっていて、その素晴らしいものを素晴らしいものとして見なければ、人間の生活はそのぶん色が薄くなって、貧しいものとなってしまう』


ともすれば技術的で、読みにくいこの本を、それでもなお、いいなと感じさせるものは、ある意味でとてもストレートな作者の姿勢です。多くの人とつながるということは、多くの幸せや不幸せに共感すると同時に、それを自分のものとして引き受けていくということ。そして、それを乗り越えていくということ。


わかりやすい特定の悲しさを描くことで共感を呼ぶような本が多い中で、この本はかわっているのかもしれないけど、それだからこそ与えてくれる静かな感動があります。


はっきりいってそんなにうまいとは思わない、もっとこうすればいいんじゃないかな、と思うところもある。でも何かをまっすぐと心に運んでくれる本です。


『この世界はとても大きくて、気をつけていないと気づかずに終わってしまうものが、たくさん、たくさんある、と彼は言う。』