『わたしを離さないで』

poriporiguchi2006-12-10

今週末は飲んでばかりで、今も少し頭が痛いです。そして、あと30分くらいしたらまた飲みに出かけます。
年末になって本来であればもう少し暇であってもいいと思うのだけど、会社にとって(とうことは多かれ少なかれ自分にとっても)大きなイベントが控えているので、そうもいかないわけです。来週はまたあくせくしそうだな。


さて、そんな慌ただしい毎日でも帰宅後の一杯(?)のウィスキーと読書を欠かしていないボクは、今週、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』(Never Let Me Go)を読了。


主人公の一人称、語りのかたちで展開する小説ですが、一つ一つの出来事をを綿密に配置していったような、繊細で美しい作品です。
特殊な施設にあって、幼いころから重い宿命を背負って生きていく人々のことが、抑制されたトーンで語られていきます。設定は特異といってもいいだろうけど、語られること自体はみんなの身近にもあるようなこと、でも話がすすんでいくにつれて、むき出しにならない、抑えられたトーンの中にこそある、どうしようもない切なさ、寂しさが、読む者の目の前にあらわれくる。そんな本だと思います。


大切なものを失っていくことから逃れられないというストーリーによって作者が書きたかったのは、ただの絶望ではなかったはずです。そんな中にも、何かしら前向きな何かを語りたいのではないのかな、と思います。切なさ、寂しさは、だだの絶望ではないんだろうから。
大切なものを失いつづけても、人はまた生きていかなければならないのでしょう。だから、切なくて、寂しいんだ、って。


いい本なので、興味があったらぜひ読んでみてくださいね。
さて、飲みに行こう。